永々棟の十二か月

永々棟の十二か月

師走
永々棟五周年を飾った「展覧会の絵」コンサート

石橋郁子

「老朽化した建物を壊して新築しようか、それとも修復して蘇らせようか…」。

平野の家 わざ 永々棟のオーナー・山本隆章棟梁は、最初この古いお屋敷を見て建築の方針を決めかねていたそうです。その古い木造建築を細かく見廻るうちに「この家を壊したら罰があたる」と思われたとか。先人大工たちが残した見事な技の跡と見事な材を丁寧に引き継いでこそ、数寄屋の棟梁たる自分の仕事であり、責任ではないかと…。

そうして始まった修復工事は残すべき所、直すべき所、新しくする所と丁寧に計画され、建物が完成したのが平成22年。「千歳棟、万歳棟、永々棟」という棟上げ時の棟梁の言祝ぎのかけ声そのものを館名として「平野の家 わざ 永々棟」と名付けられて京都の新しい文化スポットが誕生しました。“わざ”とは、“技”であり“和座”。伝統技術を伝えながらもこの館で和やかな集いのひとときを過ごしてもらいたいといく願いをこめたネーミングです。そして、この館と同世代に生まれたフランスのエラールピアノがここにやって来たのです。

永々棟のオープニングイベントとしてこの幻のピアノによるサロンコンサートを開催することとなり、ピアニストの梅原尚子さんのピアノ演奏で開幕を祝していただいたのが4年前の12月。以来、毎年梅原さんの演奏会をクリスマスの頃に催して今年5年目を迎えたのです。

今年は「言祝ぎ×音祝ぎ“展覧会の絵”」と銘打った記念コンサートが去る12月13日・14日に開催されました。タイトルの通り、曲目はムソルグスキーの「展覧会の絵」。この組曲はムソルグスキーの友人である画家でありデザイナーのヴィクトル・ハルトマンが描いた10枚の遺作の絵の印象から作曲された10曲で、ちょっとおどけた曲もあれば優雅な曲、あるいは重厚感溢れる曲など多彩で、梅原尚子さんが奏でるピアノとそのお話にお客さまたちは酔いしれていたようです。

また前夜には「ガラ・コンサート」を催してお客さまと和やかにワインで乾杯。コンサ ートだけでなく、能や狂言、茶事、落語、講演会、そして雛展などこの4年間に永々棟で繰り広げられた催事の写真やフライヤーをパネルに貼り、ワインを飲みながら振り返るという趣向。お客さまたちも5歳になった永々棟を祝福してくださり、スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

ガラ・コンサートでは過去4年間の思い出とともに、エラールピアノとゆかりの深い作曲家の曲や「マロングラッセ」や「柿の種」などおいしそうなネーミングの「お菓子の世界」と称した湯山昭の曲、ベートーベンの「第九」から「からたちの花」まで多彩なピアノ曲に酔わせる梅原さん。しかし、その才能は演奏の腕(指?)だけではなく、「ね、この音が花火の火の粉がぱっと飛んだところ」と高音のキーを弾いたり、「池の鯉が鱗をキラキラさせながらゆったり泳いでいるイメージ」と言いながら、小刻みに指を動かしたり、「そこへ鯰かな、何か大きな魚が近づいてくると…」などと語りながら低音のキーを激しく叩いたり…。そのトークによって聴く人を映像や絵画の世界へと誘ってくれるのですから、楽しさは倍増。サロンコンサートならではの贅沢で楽しい一会でした。

さて、新年からは永々棟もいよいよ5年目に入ります。人の営みがあってこそ建物は育ち、輝き、そして味わいが生まれます。どうかこれからも、末永く平野の家 わざ 永々棟を見守ってくださいますことをお願い申し上げます。

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