永々棟の十二か月

永々棟の十二か月

弥生、卯月
自分へお奉(まつ)り-大人の女の雛祭り

石橋郁子

さて、次の催事は北野天満宮の梅花祭に合わせて、2月25日から開催された「雛さまの饗宴」。高津古文化会館所蔵の寛永雛や享保雛、次郎左衛門雛などの貴重な時代雛やお道具と永々棟所蔵の雛人形や御所人形を邸内いっぱいに並べ、展示というよりはさながら、雛さまたちが遊んでいる風情。遠い時代からやってきた雛さまたちが懐かしそうに語り合い、歌い遊び、うち笑いながら戯れているようで、邸内に春風が吹いているようなのです。その雅やかないにしえの宴に招かれたような「雛さまたちの饗宴」です。

会期中、お人を絞って「雛の茶事」が行われ、幸運にも私はそのお席に招かれました。寄付で迎える立雛の画賛も本席床の宗旦のお軸も、小ぶりの赤楽茶碗も与次郎の釜も、それはそれはため息の出るようなお道具組みで、かすかに揺れる吊釜に春風を感じる豊かなひとときでしたが、やはり私は、ひちぎりや貝尽くしのお菓子、心まで癒やしてくれる濃茶や薄茶、白酒、彩りも雛めくお点心といった口福の方がまさしく幸福を実感したことでした。

どれだけ年を重ねようと女にとってうれしく楽しい雛の宴は、まさに心のマツリ。自分自身への奉(まつ)り-ご褒美-なのだと実感します。仕事や家族のことなど、もやもやとした気分に覆われることも多くなる大人の女性こそ、一年に一度はせめて、少女の頃の透明な精神を呼び覚まして、心を晴らすには恰好のお祭が雛祭りではないかと私は感じています。

「永々棟」での雛の宴は、4月3日まで開催され、千人近くのお人がそれぞれの想いをこめて、女のマツリを楽しまれたようです。

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