永々棟の十二か月

永々棟の十二か月

葉月
夏休みの子どもの家になった永々棟

石橋郁子

お茶会や雛展、コンサートなど、日ごろはカルチャー好きのご婦人向けの催しが多い「平野の家 わざ 永々棟」ですが、8月は夏休みでもあり、親子で楽しめて夏休みの自由研究などにも一役買える企画を、ということになり8月18日、「銀閣寺バーチャル探訪」と銘打った日本建築の勉強会を実施しました。

勉強会とはいえ、一般には公開されない銀閣寺のすべてをデジタル3Dとして編集された映像作品「銀閣寺」を見ながら、実際にそこにいるような目線で建物の中を探訪するというもの。いわゆる銀閣寺と呼ばれる「観音殿」まで階段を昇っていったり、国宝「東求堂」の中をぐるぐる廻って義政がお茶や連歌を楽しんだという「同仁斎」でちょっと休んだり・・・。バーチャルとはいえ、目にも贅沢な体験をしたのでした。

ちなみに、この「同仁斎」は四畳半茶室の原点とも言われる侘びた座敷で、いわば足利義政さんお気に入りの書斎。違い棚には自分の好きな文房具や香炉を飾り、本を読んだり庭を眺めたりする義政将軍の私的空間です。ここに茶の湯の好きの村田珠光、香を聞き分けるのが上手い志野宗信、優れた連歌の詠み手・牡丹花肖柏、公家に伝わる有職故実の物知り叔父さん・三條西実隆、さらには絵が上手で床の間の飾り付け方などを決めるほど高い美意識をもった相阿弥といった当代一流の文化人が集い、お茶やお香や連歌で風雅な遊びをしたのです。

のちに、村田珠光は茶の湯、志野宗信は香道、牡丹花肖拍は連歌と、それぞれに得意分野に特化して現在伝統文化と呼ばれる文化の礎を築きました。この人たちが創造した文化が「東山文化」と呼ばれる日本の美しい精神文化です。

そんなたいへんな場所に子どもたちの眼はトコトコと入っていき、ちょっと休憩したり、階段の隅っこの傷に興味をもったり、仏間の阿弥陀如来像に接近したり、庭へ出たりするのですから、大人の眼にはこれほどの贅沢はありません。

子どもたちにボランティアで講義をしてくださったのは学芸員の後藤信樹先生。この貴重な映像はNPO法人「京都文化協会」が子どもたちのために無料で貸し出してくださいました。

こうして、たくさんの人たちの厚意や協力で実現した「銀閣寺バーチャル探訪」。それぞれの子どもたちは、夏休みの自由研究や作文のテーマにしたのでしょうか?

この日の参加者は小学生と中学生、そしてその父兄の方々およそ50人。2階の広間は子どもたちの熱気でむせ返るようで、まるで夏休みの山の家風。

「どこの中学?」「何年生?」などと初対面の子ども同士が言葉をかけあっている様子もも微笑ましく、日ごろはちょっとすましたような永々棟の建物ですが、新しい表情と用途の可能性を発見したような気がしたことでした。

「子どもだましではなく、子どもたちにこそ本物のよさを」「日本建築のすばらしさを身近に」。そんなメッセージがいつか、子どもたちが成長した時にでも伝わってくれればいいな、と感じています。

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