永々棟の十二か月

永々棟の十二か月

弥生
無邪気なおもてなしの心で一座建立

石橋郁子

弥生三月は今年も恒例の「雛展」が開催され、今年も多くの方々にご来館いただきましたこと、お礼を申し上げます。

今年の雛展の趣向は、享保雛や次郎左衛門雛など京都の古典雛と明和年間に江戸の大槌屋が初代舟月に頭(かしら)を作らせ、江戸の「古今雛」として売り出し、たちまち人気の雛さまになったという江戸雛を一堂に集めた展示で、「京の雛さま 江戸の雛さま -東西ひなくらべ-」と題した絢爛豪華な雛展。永々棟の一階座敷と二階座敷を埋め尽くし、昨年同様、豪華な御殿も展示され、京都と江戸の雛さまたちがぺちゃくちゃと楽しそうにおしゃべりしている雰囲気。もしくは東西の文化をめぐって皇女和宮と天璋院よろしく、文化論を闘わせていたのかもしれません。おっとりと上品なお顔の京雛を見慣れている私には、面長で少し受け口の凜とした表情の江戸雛がちょっと新鮮で、小さなひな道具たちもどことなく粋な江戸風。お人形にもお国がらがあるのだなと、興味深く拝見したことでした。

二日はやはり恒例の「少女たちのひな茶会」。永々棟の小間に誰が袖棚に小ぶりの染付水指をはんなりとしつらえて、曲(まげ)建水に茶碗を入れた入れ子点てでのお点前。永々棟子ども茶道教室に通う小学生たちが日ごろのお稽古の成果を発揮して可愛い亭主となってお客さまをもてなします。子どもといえど、三年目ともなると点前の腕も上がり、体の形も整った上、度胸も出てきて終始堂々たるもの。「次、お茶碗取りに行って」とか「お仕舞いの替え茶碗、ここに置いておいてください」などと、熟練の茶人めいた様子です。私は一応、指導という名目でその場にいて、逐一指示を出す立場でしたが、テキパキとした子どもたちの振る舞いに私はただうれしく驚いているばかり。子ども茶道教室をご指導いただいている二人の先生の薫陶よろしく、少女たちは素敵に育ち、行く末はさぞかしよいお茶人さんに・・・と、楽しみなこと。そして私が何よりもうれしかったのは、「あこ、●●ちゃんのおばあちゃんが来たはるし、●●ちゃん、先にお茶出して」などと、子ども同士で配慮をしあっていたこと。小さいけれど温かいこんな気配りができることこそ、おもてなしの心を育てる茶道の本意ではなかったのでしょうか。高価なお道具やしつらえにばかり価値を見いだし、「和敬清寂」の心はどこへやら、といった茶人が多い中で「何とこの子たちは、清らかな茶味を備えていることか」と、心から感動を覚えました。

今年もまた、衣笠中学茶道部のお姉さん方とその指導者・岡本先生が応援に駆けつけてくださって、臨機応変の能力が問われる難しい半東を務めてくれました。お点前をする子どもの後ろで、お客さまに挨拶をしたり、お茶を出したりするのですが、「この日のために一生懸命お稽古しました。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」などと、少し照れながらも見事な半東ぶりです。

小学生に混じってまだ幼稚園の愛果ちゃんも今年は大活躍で、終始にこにこしながらお運びさんを務めます。お客さま一人ひとりの前に習った通りにきちんと座って「お菓子をどうぞ」とお辞儀をするしぐさの愛らしさに皆さま頬をほころばせておられます。とりわけ、おばあちゃまの前にお菓子やお茶を運んだ時の愛果ちゃんとおばあちゃまの幸せな笑顔は、席中を幸福な気分で満たし、この席の温かい一座建立となりました。

少女たちはそれぞれに可愛い着物姿で髪もおませに結い上げてもらい、ちょっと気取って「いっぷくさし上げます」などとご挨拶する姿も愛らしく、ピンク色の節句情緒を最高に盛り上げた一日となりました。

この子たちが来年、どのように成長しているのか、来年のひな茶会が今から楽しみです。

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